デザインを独学で勉強している/しようとしている皆さん。
どんな本から読んだらよいか、迷いませんか?
特にデザイン未経験・初心者の場合、自分にとって必要なスキル・知識がはっきり分からず、
「とりあえず有名な本を買ってみよう…」
といった行動を取ることもあるでしょう。
選択肢はたくさんありますが、レベルや目的が自分に合った書籍でなければ、せっかく勉強しても学習効率が低くなってしまいます。
そこで、この記事では、初級編・中級編・上級編にレベル分けして「デザインの知識レベルを高めるおすすめ本」をご紹介します。
おすすめしたい本は何十冊もあるのですが、あまりにもたくさんの本を紹介しても迷子になってしまうかもしれないため、今回は厳選した10冊のみご紹介していきます。
どの本も、実際に読んでみてとても役立った本ばかりですので、参考になれば幸いです!
【初級編】デザイン入門はこれで決まり!基礎知識を習得できる本2冊
まずは基礎固めに役立つ2冊をご紹介します。
- 『デザイン入門教室[特別講義]確かな力を身につけられるー学び、考え、作る授業』坂本伸二・著(SBクリエイティブ株式会社)
- 『なるほどデザイン』筒井美希・著(エムディエヌコーポレーション)
『デザイン入門教室[特別講義]確かな力を身につけられる 学び、考え、作る授業』坂本伸二・著(SBクリエイティブ)
「自分にはセンスがない」
そう思ってる人に読んでほしい一冊が『デザイン入門教室[特別講義]』です。
チラシや紙面、Webサイトなどのデザインをしてみようという方の中で、こんな不安が頭をよぎったことがありませんか?
「デザインはセンスがなければできないのではないか」
しかし、センスは知識で磨くことができます。くまもんのアートディレクター・水野学氏の著作『センスは知識からはじまる』には以下のような言葉があります。
“センス”とは、特別な人に備わった才能ではない。それは、さまざまな知識を蓄積することにより「物事を最適化する能力」であり、誰もが等しく持っている。
水野学・著『センスは知識からはじまる』朝日新聞出版
まずはデザインのルールを「知識」として取り込み、ルールに基づいたデザインの基礎固めをしてほしいと思い紹介するのが『デザイン入門教室[特別講義]』です。
本書の冒頭には以下のような言葉があります。
デザインにはルールがある
坂本伸二・著『デザイン入門教室[特別講義]確かな力を身につけられるー学び、考え、作る授業』SBクリエイティブ株式会社
ルールを守りながらデザインすることで、誰でも「洗練されたデザイン」に一歩近づくことができます。
デザイナーを志す人はもちろん、ビジネスシーンにおいて「資料をきれいにつくりたい」「センスが無いと言ってきた上司を見返したい」という人も、まずはルールを叩き込むことをおすすめします。
また、クリエイティブ制作は外注で検収だけしかしない場合でも、外注先の納品物を本書記載のルールにしたがってチェックすることで、より早くより効果的に納品物の検収ができるようになるでしょう。
『なるほどデザイン』筒井美希・著(エムディエヌコーポレーション)
表紙が印象的な『なるほどデザイン』、ベストセラー本なので書店で見たことがある人もいるでしょう。本書は、デザインの知識を初心者にもわかりやすく教えてくれる本です。
先ほどご紹介した 『デザイン入門教室[特別講義]』と同様、初心者が1冊目として読むのに向いている書籍です。
しかし、本書は『デザイン入門教室[特別講義]』とスタイルが正反対なので注意が必要です。 『デザイン入門教室[特別講義]』 は文章がベースの解説なのに対して、『なるほどデザイン』は図やイラストを中心とした視覚的な解説です。
ページのほとんどに写真や図表が大きく掲載されているので、本を読むのがあまり得意ではない人でも取っつきやすいです。
本書が取り扱う内容は『デザイン入門教室[特別講義]』と大きく変わりません。どちらの書籍も「デザインの基礎」に関する書籍であり、根底にある考え方は共通しています。したがって、どちらを買うか迷ったら、本を読むのに慣れているかどうかを判断基準にすると良いでしょう。
選び方のポイント
教科書的な文章を読むのに慣れている方、文脈の中で理論体系の理解を深めていきたい方
→『デザイン入門教室[特別講義]』
文章を読むのが苦手な方、図や写真などの視覚的な刺激がある方が理解しやすい方
→『なるほどデザイン』
ちなみに筆者は、文章ベースの方が頭に残りやすいので『デザイン入門教室[特別講義]』の方が好みです。「好み」と書いたように、本当に好みが分かれるところなのですが、どちらを選んでも正直ハズレはありません。
【中級編】細部にこだわったデザインを学びたい時におすすめのデザイン本4冊
初心者の頃は、デザインのルールを知らないため、「あるある」なデザイン面の間違いを犯しやすいもの。そういった間違いは【初級編】でご紹介した2冊を読むことで、ある程度解決・矯正できるはずです。
しかし、「間違ってはいないけれど、なんとなく違和感を覚える箇所」は自分の視点だけでは見つけづらいです。
この違和感の原因ははっきりしています。基礎知識だけでは学びきれなかった「細部へのこだわり」が抜けてしまっているからです。この「細部へのこだわり」こそが、いわゆる「センス」なのかもしれません。
デザインの知識はある程度あるけれど、センスがどうしても磨けていないと感じている方に質問です!
「細部へのこだわり」と聞いて、どこにこだわればいいのかわかりますか?
この【中級編】では、【初級編】の書籍にも登場する「フォント」「配色」に加え、さらに細やかにデザイン性を高めてくれる「あしらい」、この3点にフォーカスし、これらの知識・スキルを強化してくれる書籍を3冊紹介します!
- 『ほんとに、フォント。』ingectar-e・著(ソシム)
- 『あたらしい、あしらい。』ingectar-e・著(ソシム)
- 『いろいろな、いろ。』ingectar-e・著(ソシム)
これら3冊は同一著者によるシリーズ本の中からピックアップしたものです。これらを読んだとき、
「ただ適当に選んだ色やフォントを使えばいい」
そんな考えをしていた自分を反省したくなりました。各書籍タイトルを見れば一目瞭然なのですが、それぞれ
- フォント
- あしらい
- 配色
に軸足を置いた書籍で、ひとつのテーマについて掘り下げているので読み応えたっぷりです。
読み終えたあとも、時間をおいて何度も読み返したくなるのも特徴です。いろいろなメディアでもおすすめされているのですが、ただ単に広告されているわけではなく、本当に実力を下支えしてくれる良書だからこそ多くの方がオススメしています。
各書籍のご紹介に移る前に、3冊の共通点を先にお伝えします。
共通点
- デザインのNG例とOK例が載せられており、それぞれついて何がダメなのか、どこを修正したら良いデザインになるのかを的確に解説
- 見落としがちな細かなところ(=「センス」に直結するポイント)も抜かりなく指摘
- NG例へのダメ出しは少しキツめ。はっきりとした指摘にはっとさせられる
それでは、各書籍について簡単にご紹介していきます!
『ほんとに、フォント。』ingectar-e・著(ソシム)
デザインの要素は1つではありません。
レイアウトやジャンプ率、写真のトリミングの仕方など要素は数知れずありますが、フォントの選び方は最重要候補のひとつです。
今まで「明朝体」と「ゴシック体」の使い分けくらいしかやってこなかったのに、デザイナーを名乗ってる人は山ほどいました。フォントへのこだわりでデザインがこんなにも変わるんだ!ということを丁寧に解説してくれる一冊です。
「共通点」で述べたように、NG例に対するツッコミは具体的かつ的確で、良くない点を自分の脳内に刷り込むことができます。
このページの冒頭では「フォント選び、それはセンス」と強調しています。また登場ですね、「センス」。文字にも命があり、それぞれに性格を持ち合わせています。街中で何気に見ている道路標識や看板で使われているフォントには必ず意味があります。
書籍内の例題はそのほとんどがチラシやポスターですが、お店の雰囲気に合ったフォントやクライアントのイメージを意識したフォントの選び方がこの一冊で学べます。
『あたらしい、あしらい。』ingectar-e・著(ソシム)
『あたらしい、あしらい。』は、あしらいの盲点をついてくれる本です。
「あしらい」という言葉は一般的に馴染みがなく、ここで初めて耳にする方もいると思います。「あしらい」は、簡単に言えば「飾り」のような意味合いで、吹き出しや下線、文字の加工などもあしらいのひとつです。もちろん背景などに使われるイラストなども当てはまります。
あしらいを工夫すると、一気にデザイン性をアップさせることが可能になります。
さらに『あたらしい、あしらい。』は、デザインの時代背景も教えてくれます。
ファッションや食べ物に流行がありょうにデザインにも時代の流れがあります。たとえばリボンひとつでも、昭和の古臭い雰囲気が悪い意味ででてしまって全体のイメージに愕然とさせられることも。いかがでしょう、この書籍のタイトルの意味がわかってきませんか?
あしらいにも「新しさ」が必要であることを教えてくれますし、どんなあしらいを使おうか迷ったときにこの本を手に取るとイメージがわきやすくなります。本書は、「解説本」でもあり、困ったときの「駆け込み寺」でもあるのです。
『いろいろな、いろ。』ingectar-e・著(ソシム)
『いろいろな、いろ。』は、配色技法の知識を深められるシリーズ最新作です。主にチラシや商品ポスター、Webサイトなどの制作物で使える配色パターンを解説しています。
色に関する本は、色彩検定や色彩心理、配色パターンの事例集など多岐に渡りますが、デザインにおける配色の知識を初級レベルから中上級レベルに引き上げてくれる本はそれほど多くありません。
こちらは2021年12月に出版されたばかりの本なのですが、ただ流行りに乗るだけでなく、イメージごとでカテゴリー分けされている点が素晴らしいです。商材(コスメやアパレル、プロテインなど)ごろに分けられているので、制作対象商材にあわせて逆引きすることができます。
その配色にどのような意味が置かれているのかについてが細かく解説されているので、上司やクライアントに配色の根拠を説明するときにも使えておすすめです。
同じ赤でも使い方一つ変えると感じ方も変わり、色にも性格を持っていることなども知ることができますよ。
『見てわかる、迷わず決まる配色アイデア 3色だけでセンスのいい色』ingectar-e・著(ソシム)
『3色だけでセンスのいい色』は、配色パターンに迷ったら読みたい本です。ここまでご紹介してきた書籍と著者は同じです。
こちらは知識本というよりはアイデア帖としてかなり重宝できる一冊。デザイン・クリエイティブの仕事をしていると、配色でつまづいてしまう場面に直面することが多々あります。
この本で教えてくれることは、アイデアはもちろんですが、同じ3色パターンでも使う色の面積でイメージがガラリと変わるということです。
今流行りのくすみカラーを使った配色パターンや、イメージにあった色の使い方がたくさん掲載されています。見ているだけでもうっとりするような素晴らしい色使いを楽しめます。配色は本当に難しいですが、それ以上に楽しさがあることを教えてくれるおすすめの一冊です。
【上級編】目指せ、プロのデザイナー!真似して学ぶ実践テクニックが満載の4冊
ここからはプロのデザイナーのデザインを真似しながら実践できるような書籍をご紹介します。
レイアウトを真似したり、デザインを制作する際に必須となるツール(イラストレーターやフォトショップ)の裏技的技法が載っていたりもします。
『トレース&模写で学ぶ デザインのドリル』Power Design Inc.・著(ソシム)
トレースとは「描き写す」という意味。この書籍ではあらかじめ素材が用意されていてダウンロードして使うことができるようになっています。初心者でも準備でつまずくことなく、毎日一歩ずつ着実に上達できます。
まずは、洗練されたデザインを見ながら何度も繰り返し真似をし、実践することで素敵なレイアウトを施せるようになります。こうすることでいざ本番でチラシやバナーを作成するような時にレイアウトで悩むことが少なくなりますよ。ぜひ試してみてください。
『Illustrator & Photoshop デザインの作り方 アイデア図鑑』上司ニシグチ 他・著(SBクリエイティブ)
『Illustrator & Photoshop デザインの作り方 アイデア図鑑』 は、イラストレーターとフォトショップを同時に学べる超実践型の本です。
こちらの本も、 『トレース&模写で学ぶ - デザインのドリル』 と同様に、素材があらかじめ用意されています。自身でダウンロードするだけで実践することができる、読者にやさしい書籍です。
イラストレーターやフォトショップの初心者向けの解説本はたくさんありますが、実践的と言えるものはなかなか少なく、ツールの使い方を画面キャプタで解説されているものが多く存在しているようにお思います。
この本の冒頭でも説明されているのですが「まずは手を動かして学ぶ」ことに重点を置き解説が進んでいきます。しかもアイデア数は100点近くあり、とてもボリューミーです。
『Photoshop レタッチ [伝わる] 写真補正&加工を学ぶ現場の教本』大谷ミキト・著(エムディエヌコーポレーション)
本書は、フォトショップでのレタッチに関するテクニック集です。
フォトショップのテクニック本もイラストレーター同様にたくさんあります。どれがいいか悩んだら、ぜひこの書籍を手に取ってみてください。ポイントは本当に現場で使えるレタッチのテクニックばかりが紹介されている点です。世の中に出ている写真のほとんどがレタッチされていると言ってもいと思います。
レタッチがどれほどに大事なことなのか、画像補正することでどれくらい印象を変えることができるのかということを知っった上でデザイナーが画像に手を加えることができるようになると、クライアントからの需要も高くなります。
オリジナル画像のBefore/Afterの写真を並べて見比べることができるようになっています。
正直に言いますと、目を凝らしてじっくり見ないとどこがレタッチされて変わったのかわからないほど細かな作業をしている作品もあります。しかし、ひとつひとつBefore/Afterを比較していくことで、レタッチすべきポイントが着実に身に付いていきます。
『Illustratorデザインベーシック 制作に役立つ基本とテクニック』井上のきあ・著(エムディエヌコーポレーション)
Illustratorの使い方をマスターしたい方におすすめしたいのが、 『Illustratorデザインベーシック 制作に役立つ基本とテクニック』 。
この書籍の著者である井上のきあ氏は、過去に何冊ものイラストレーターの解説本を出版していますが、いくつかある著作の中では本書が一番細かく解説されています。各ステップに対して画像キャプチャーが細かく示されているので、ひとつひとつの操作に迷わず進められます。
初心者の方はもちろんのこと、ある程度イラストレーターの知識を持っている方でも知らなかったようなテクニックを知ることができます。
独学でイラストレーターをマスターしたい方におすすめしたい一冊です。
まとめ|デザインは独学できる!ピンときた1冊を手に取ってみましょう
デザインに関するおすすめ本を、知識レベル別に10冊ご紹介いたしました。
これらは初心者の方にも理解しやすい親切な本ばかりですが、デザイン・クリエイティブの業務に携わる中で何度も読み返している本ばかりです。「こんな知識、とっくに知っているよ!」と思っていることでも、デザインにつまづいた時などにもう一度読み返してみると、たくさんのヒントを得られています。
一度読むだけではなく、末長く手元に置いて役立ててください!
▼色について体系的に勉強したい人は、色彩検定がオススメです。
専門的な話題も多くあり、実務で役に立たないという人もいますが、確固たる基礎知識の上に応用的な実践ができるものです。
理論体系に基づいてデザインを説明できると、ビジネスシーンにおける説得力もアップします。