ブレインストーミングの目的とは?無意味・時間の無駄って本当?ブレストの真の目的を解説

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アイデア出しや企画会議などで、「ブレインストーミング」を体験ことがある方は多いと思います。この記事は、その「ブレインストーミング」について、その「目的」にフォーカスして解説します。

ブレインストーミングとは?

ブレインストーミングとは、あるテーマについて1人以上10人以下程度の少人数でおこなうアイデア発想法です。アイデアを複数人で出し合うことで互いに刺激し合い、その場でクリエイティブなアイデアを創出することを目的とするケースが多いのではないでしょうか。

簡単な流れを明します。

  • ふせんを用意する。
  • テーマに沿って自由にアイデアを書き留める。
  • 他人のアイデアを否定せず、また、自分のアイデアをマネされることを良しとする。
  • とにかく多くのアイデアを出すことに注力する
  • 似たアイデア同士をグルーピングしたり、アイデアの具体化・抽象化を行き来したりしながら、考えを深め、アイデアを研ぎ澄ます。

これはあくまでも概略であり、ブレインストーミングにはさまざまな手法がある点に注意してください。今回は、さまざまな手法の紹介はしません。

ブレインストーミングが無意味、無価値になってしまう理由とは?

さて、ブレインストーミングは、問題決策のためのアイデア発想という観点ではマイナスに作用する、と言われています。

先ほど述べたように、ブレインストーミングには「他人のアイデアを否定しない」「とにかく多くのアイデアを出すことに注力する」などのルールが設けられるケースが多いでしょう。しかし、実際には理想通りにブレインストーミングを進めるのはとても難しいのも事実です。

それはなぜでしょう?想像してみてください。

いくら自由なアイデアを出してもよいとはいえ、「こんなの絶対にできない!」と思えるようなアイデアを目にしたとき、無意識的にネガティブな感情を抱きます。たとえ、本当に「どんな意見もウェルカム!」という雰囲気だった場合でも、誰かが本筋からそれた「ふざけた」アイデアばかり出したり、大喜利のような雰囲気になってしまったりと、自由を履き違えてしまう人が出てくるケースも少なくないのです。

それだけ、ブレインストーミングの場を整えるのは難しい、ということです。

ブレインストーミングの目的とは?

ブレインストーミングから生まれるアイデアは質が低い

一般的に、ブレインストーミングで生まれたアイデアは、プロジェクトメンバー間のディスカッションなど、他の方法で生まれたアイデアに比べて質が低いことが知られています。これを専門用語で「生産性の低下(Productivity Loss)」といいます。

これに関しては、Andrew HargadonとRobert I. Sutton(1996, 1997)がおこなった、デザインファーム・IDEOにおけるエスノグラフィーによるブレインストーミング研究が参考になります。この研究は、主要メンバーや当時のクライアントへインタビューするとともに、IDEOでのブレインストーミングの様子を参与観察し、ブレインストーミングの本質的価値を探ろうとしたものです。

この研究によると、アイデアの「数」よりもアイデアの「質」が重要であることが指摘されています。また、ブレインストーミングにおけるアイデアの「数」を減らす要因である「生産性の低下(Productivity Loss)」にも言及しています。

ブレインストーミングでは良い解決策が得られないのが普通であり、ユニークなアイデアを見つけられるのはとても珍しく幸運なことだと認識しておくと、「期待していたのに良いアイデアが出なかった…」などガッカリすることが少なくなるでしょう。

・・・ここで疑問を持つ方もいるのではないでしょうか?

「と言っても、現在もIDEOやd-schoolのような問題解決能力や想像力が高い組織ではブレインストーミングが使われているじゃないか!」
「それなのに、アイデア創出ができないのが当たり前って、そんなわけないだろう!」

そう思うのも無理はありません。実は、他に大きな意味があるのです。

(参考文献)Sutton, Robert I., and Andrew Hargadon. “Brainstorming Groups in Context: Effectiveness in a Product Design Firm.” Administrative Science Quarterly, vol. 41, no. 4, [Sage Publications, Inc., Johnson Graduate School of Management, Cornell University], 1996, pp. 685–718, https://doi.org/10.2307/2393872.

Hargadon, Andrew, and Robert I. Sutton. “Technology Brokering and Innovation in a Product Development Firm.” Administrative Science Quarterly, vol. 42, no. 4, [Sage Publications, Inc., Johnson Graduate School of Management, Cornell University], 1997, pp. 716–49, https://doi.org/10.2307/2393655.

ブレインストーミングの真の目的、本質的価値とは?

ブレインストーミングの真の目的、本質的価値に迫るうえで、こちらの文献が参考になります(タイトルで検索するとPDF版も見つけることができるでしょう)。

Sutton, R. (2006, July 25). Eight Tips for Better Brainstorming. Bloomberg Business Week. Retrieved August 12, 2014, from http://www.businessweek.com/stories/2006-07-25/eight-tips-for-better-brainstorming

この中に書かれているのが以下8つのTipsです(和訳は著者によるもの)。

  • Use brainstorming to combine and extend ideas, not just to harvest ideas
  • Don't bother if people live in fear
  • Do individual brainstorming before and after group sessions
  • Brainstorming sessions are worthless unless they are woven with other work practices
  • Brainstorming requires skill and experience both to do and, especially, to facilitate
  • A good brainstorming session is competitive—in the right way
  • Use brainstorming sessions for more than just generating good ideas
  • Follow the rules, or don't call it a brainstorm

ここで重要なのが7番目に挙げた項目です。見出しだけでは分かりにくいと思いますので、該当する箇所を引用します。

Brainstorms aren't just a place to generate good ideas. At IDEO, these gatherings support the company's culture and work practices in a host of other ways. Project teams use brainstorms to get inputs from people with diverse skills throughout the company. In the process, a lot of other good things happen. Knowledge is spread about new industries and technologies, newcomers and veterans learn—or are reminded—about who knows what, and jumping into a brainstorm for an hour or so to think about someone else's problem provides a welcome respite from each designer's own projects. The explicit goal of a group brainstorm is to generate ideas. But the other benefits of routinely gathering rotating groups of people from around a company to talk about new and old ideas might ultimately be more important for supporting creative work.

Sutton, R. (2006, July 25). Eight Tips for Better Brainstorming. Bloomberg Business Week. Retrieved August 12, 2014, from http://www.businessweek.com/stories/2006-07-25/eight-tips-for-better-brainstorming

大まかに和訳すると、以下のようなことが書かれています。

ブレインストーミングは、単に良いアイデアを生み出す場ではありません。IDEOでは、ブレインストーミングは「会社の文化」「仕事のやり方」を下支えしているのです。
プロジェクトチームはブレインストーミングを利用して、社内のさまざまなスキルを持った人たちからインプットを得ています。(中略)新しい業界や技術についての知識が広まり、新人やベテランの誰がどんな知識を持っているか学んだり、想起したりします(中略)グループで行うブレインストームの目的はアイデアを生み出すことですが、他にもこういったベネフィットがあるのです。つまり、アイデアを話し合うこと自体がメリットであり、クリエイティブな仕事をサポートする上ではより重要と言えます。

つまり、ブレーンストーミングには、アイデア発想を促進する効果というよりもむしろ、組織内のメンバー間の知識共有や相互理解を深める効果があった。つまり、組織力を強化する役割を果たしている。ということなのです。

メンバーが互いの強みや経験、専門分野を理解し、知識やノウハウを共有し、その結果クリエイティブ組織としての力が強くなります。相互理解が深まることで、誰と組めばよりよいアウトプットにつなげられ得るかを創造できるようになります。各メンバーの強みを発揮して、チームで問題を解決することで、1人では到達しえなかったレベルの仕事ができるようになるのです。

ブレインストーミングは「組織力強化」のためのもの!適切な効果測定を実施しよう

ブレインストーミングを発想法のひとつと捉えていた人にとって、この事実は衝撃的だったのではないでしょうか。この事実を認識・理解していないと、メンバーの時間や組織のお金をかけてブレインストーミングの場を設けても、期待した効果が得られず、悲しい結末を迎えることでしょう。そして、「ブレインストーミングは意味がない!無価値だ!」と結論付けてしまうことにもつながります。

繰り返しますが、ブレインストーミングはアイデア発想の手段としては最善手ではありません。言い換えると、ブレインストーミングの効果は「アイデアの質・量」という観点では測り得ません。

ブレインストーミングの効果を適切に評価するためには、参加したメンバー同士で知識共有をおこなえたか、メンバー同士の相互理解が深まったかどうか、に着目する必要があるのです。ブレインストーミングを終えたあと、メンバー間のコミュニケーションに変化が生じたか、ブレインストーミングで得た知識を活用できているか、に目を向けて効果測定しましょう。

ブレインストーミングとディスカッションの違い

ここまで読んでいただいて分かるように、ブレインストーミングの主目的は「組織力強化」です。何らかの問題解決をしたい、次のアクションを決めたい場合は、明確に「ディスカッション」と定義して場を設定する必要があるでしょう。なぜなら、ディスカッションの場合は、異なる意見をぶつけ合い、メリット・デメリットや懸案事項を議論を通じてすり合わせることで、どの意見が最もビジネスに資するか、次のアクションとして有効かを見極めることが目的だからです。

ブレインストーミングとディスカッションでは、見据える先が全く違うということを覚えておきましょう。

まとめ|ブレインストーミングを有効活用し、組織を強くしよう

ブレインストーミングは、一般的な目的である「問題解決策のアイデア出し」という観点ではマイナスに働くことが多くあります。ブレインストーミングの真の目的、本質的な価値とは、メンバー間のナレッジシェアや相互理解の促進にあります。つまり、組織力強化の手段としては非常に効果的なのです。したがって、ブレインストーミングの効果測定をおこなう際には、「アイデアがいくつ出せたか」「アイデアが施策に、経営指標にインパクトを与えたか」ではなく、「メンバーが新しい知見を得ることができたか」「メンバー間の相互理解が深められたか」といった組織目線で評価すべきなのです。この記事が、今後のブレインストーミング運営に役に立つと幸いです。

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