個人事業主やフリーランスは、事業の自由度が高く魅力的な仕事です。
一方で、事業の認知度や季節要因が影響して収入が安定しないこともあります。
将来の目的に向かって、事業を進めると同時に、「お金にも働いてもらう」ためにも投資を活用することのメリットは大きいのです。
「投資」と聞いて真っ先に持つイメージは何でしょうか?
「危険」「損をする」と考えているかたもいらっしゃるかもしれません。
「投資」は、債券や株式、不動産を長期に保有することによって、配当や収入などを得る方法です。対象の成長を目的として資金を集めて、利益などを支援の対価として支払いますので、社会にとっても有益なものです。
この記事では、投資のメリットと注意点を確認しながら、個人事業主にオススメの投資方法を提案していきます!

個人事業主・フリーランスが投資をするメリット
個人事業主には、確定申告義務があります。仕入れや必要経費を計上することはできますが、個人事業主本人の報酬は必要経費にはならないため、節税をすることも収益を確保するためのひとつの方法です。
メリット1:節税効果が高い
個人事業主には、一般的な節税方法のほか、主に7つの節税方法があります。
- 青色申告
- 損益通算
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
- NISA(小額投資非課税制度)
- 国民年金基金
- 小規模企業共済
- ふるさと納税
特に、個人事業主の場合はiDeCoのメリットがとても大きいです。
なぜなら、年間816,000円まで掛金を加入できるため、サラリーマンよりも優遇されています(会社員の場合は、年間140,000円~のケースが大半です)。
メリット2:不安定な老後の資産をカバーできる
個人事業主は、公的年金の金額が少なく、老後の生活が不安定になりがちです。できるだけ早く対策することに越したことはありません。
個人事業主は、公的年金制度として国民年金保険に加入しています。
65歳に達すると、満額で年間777,800円受け取ることができます(※2022年時点)が、これでは老後の資産として若干心もとないでしょう。
預貯金では十分な資産を準備することは難しい経済環境にあるため、「投資」によって資産を増やすことを考えてみます。
投資は、長期に行うことで、運用利益が更に運用されて増えていくという「複利効果」があります。
「投資期間」と「複利効果」の関係では、投資期間が長ければ長いほど、複利効果が大きくなる傾向があります。
また、長期投資によって価格変動リスクが小さくなり、安定した収益が期待できます。
例1:毎月2万円を30年間にわたって、年率3.0%で運用できた場合
元金:720万円
30年後の最終積立金額約1,165万円(税引前)
例2:毎月5万円を30年間にわたって、年率5.0%で運用できた場合
元金:1,800万円
30年後の最終積立金額約4,161万円(税引前)
メリット3:経済の知識が身につき、事業にプラス効果
世界経済は、需要と供給で成り立っています。投資の世界も同じです。
例えば、再生エネルギーの需要が高まれば、洋上風力発電や水素発電などの技術が期待され、関連企業による供給が増えることになります。
個人事業主が営んでいる事業に関連する企業の需要と供給をとらえることができれば、事業にとってプラスに。
投資とは、ギャンブルや投機とは目的や仕組みが異なります。
ギャンブルは、娯楽が目的です。賭金から胴元が運営費用を差し引いた金銭を勝敗に応じて分け合いますので、胴元が一番儲かる仕組み。
投機は、短い期間で価格の上昇や下落を予想することによって、利ざやによる利益を得ることです。FXや仮想通貨による短期売買もこれにあたります。
投資は、債券や株式、不動産などを長期に保有することによって、配当や収入などを得る方法です。対象の成長を目的として資金を集めます。利益などを支援の対価として支払うため、社会全体にとっても有益で双方が「WIN-WIN」の関係になるのです。

個人事業主が投資をする際の注意点
投資では、「長期」、「分散」、「つみたて」が基本です。
この基本原則から外れれば外れるほど、リスクを取ることになります。この3つの観点を軸に、注意点について解説していきます。
どんな資金を投資にあてるか、選択がとても重要
事業の収益をすべて投資にあててもいいでしょうか。答えはNoです。
なぜなら、個人事業主が必要とする費用は、仕入れ、経費、報酬の確保が必要だからです。
最低でも3か月分の運転資金は手元に置きましょう。今年の事業収益が確定したら、その金額を目安に投資金額を決めます。
投資は、あくまでも余裕資金で行うものです。
翌年以降の事業計画をしっかりと立てて、減価償却すべき資産を取得する費用なども、試算しておくことをおすすめします。
分散するとはどういう意味か?
「卵は一つのカゴに盛るな」という世界経済の格言。多くの卵を一つのカゴに入れて落とした場合、すべて割れてしまうリスクがあります。
そのリスクを避けるために、複数のカゴに卵を入れておくのです。
投資の世界でも、資産の分散、地域の分散、時間の分散などによって、リスクを最小限に抑えようとします。
資産の分散では、株式が低調でも債券のパフォーマンスがよいこともあります。
地域の分散では、複数の地域や通貨を組み合わせます。
時間分散では、一定の時期に一定の金額を購入することで、価格が安いときに多く購入し、価格が高いときには少なく購入することで様々な値動きに対応できる効果があります。

つみたてを利用し、急落へのリスクを最小化する
投資の初心者でも、少額から投資ができるのがつみたて投資のメリットです。
つみたて投資では、複利効果が期待できます。
「時間の分散」を活用すると、経済の動きによって、高い価格で購入したり、低い価格で購入したりすることの繰り返しになりますが、長期で見ると、一回あたりの投資価格は平準化されます。
次の図は、毎月1万円を20年投資した場合の過去の実績です。
2001年から2019年の間には、米国同時多発テロやイラク戦争、さらにはリーマンショックもありました。
投資の成果は、誰にも予想はできませんが、つみたての効果を実感できるのではないでしょうか。


個人事業主におすすめの投資方法
NISA制度は、国が定めた少額からの投資を行う方のための非課税制度です。
日本に居住する成人の方が利用できるNISAには、2つの種類があります。「一般NISA」と「つみたてNISA」です。
この2つは選択制となっていますので、両方同時に利用することはできません。
一つの年に利用できるのはどちらか一方です。
NISA
一般NISAの購入限度額は、年間120万円です。購入方法は、一括で購入しても構いませんし、複数回に分けて購入しても構いません。
NISA制度を利用するには、新たな資金で購入していただく必要がありますので、証券会社などの口座にお預けになっている株式などをNISA口座に移すことはできません。
投資対象は、株式、株式投資信託、ETF、REITです。
たとえば、2022年に、A社の株式を120万円購入したとします。配当金が1年間に6万円だったとすると、受取った6万円に税金はかかりません。
2022年に購入したA社の株式は、2026年末までが非課税期間となります。
ではその後はどうすればよいのでしょうか。
非課税期間中に売却した場合は、売却益などが非課税になります。そのまま保有したい場合には、2027年の非課税枠を使うことができますし、特定口座などの課税口座に時価で移すこともできます。
引き続き非課税枠を利用したい場合は、2026年中に証券会社などからご案内が届きますので各社の定める期限までに手続きをしてください。120万円で購入した株式が150万円になっていたとしても、そのまま2027年の非課税枠に移管することができます。
つみたてNISA
つみたてNISAの年間の投資上限額は40万円です。
毎月3万3千円ずつ積み立ててもいいですし、毎月1万円ずつ、ボーナス時などに14万円を上乗せして積み立てることもできます。
つみたてNISAは1,000円から積み立てることができますので、少額投資を試してみたい方にもおすすめです。
投資対象は、金融庁が選定した積立に適していると認められた投資信託です。
非課税期間は20年間ですが、毎年積み立てた金額ごとに20年間非課税となります。
分配金の受取方法は、2種類あります。分配金を受取る方法と、再投資する方法です。
分配金を受取る場合は、受取ったお金を自由に使うことができますが、元本と併せて運用しないため複利効果が薄れます。
分配金再投資の場合は、資産価値が上昇すると複利的効果が得られます。長期投資になるほど、その効果は大きくなります。
iDeCo
個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)は、老後の資産形成に最適な投資方法です。利用可能期間は、原則65歳までです。
非課税上限額は、加入している年金制度などによって異なります。
特に、個人事業主は国民年金の第1号被保険者ですから、上限額が大きく区設定されています。
対象商品は、加入する運営管理機関によりますが、投資信託、預貯金、生命保険などです。
年間816,000円まで加入できますので、非課税効果も高いです。
節税効果が高い項目は、次の3点です。
積立期間中または運用指図中に発生した運用益が非課税
投資信託などの分配金が非課税で再投資できるため、複利効果が高い。
積立金額が、全額所得控除
例えば、年間816,000円積み立てたとすると、所得金額から816,000円全額が控除されます。青色申告の650,000円の控除と同じように引くことができるということです。その結果、住民税も安くなります。
受取時の税優遇
一時金で受け取った場合は、退職所得控除が利用できます。
年金形式で受け取った場合は、公的年金控除が利用できます。
iDeCoにもデメリットがある
iDeCoは原則60歳まで引き出しできない点がデメリットに感じる方もいるでしょう。急遽お金が必要になったときに簡単には引き出せません。余裕資金の範囲でおこなうことが前提とされているので、これはやや仕方のないことではあります。
簡単に引き出せないので「手元にあったら、ついうっかり使ってしまう」という方にとっては、この縛りは有効とも言えます。
また、iDeCoには運営管理費用や国民年金基金連合会等への料金がかかる点にも注意が必要です。

新NISA改正のポイント
令和5年度税制改正の大綱等において、以下のとおり、2024年以降のNISA制度の抜本的拡充・恒久化の方針が示されました。

新制度は2024年1月からスタートし、どちらも利用できるようになります。
非課税で保有できる期間も無期限とします。
年間の投資の上限額は、
・「つみたて投資枠」が120万円
・「成長投資枠」は240万円
非課税で保有できる資産の限度額は、2つの枠の合計で最大1800万円です。
現在、「一般NISA」や「つみたてNISA」を利用している人も、新たに上限額まで利用することができます。

まとめ
経済状況は短期的にはさまざまな変動があります。それでも、長期で見ると課題を克服して成長し続けています。投資には、経済の流れをゆったりと見ながら、長期で運用を考えていく姿勢が大切です。
「長期」「分散」「つみたて」の基本原則に則って、余裕資金を元手に投資をおこなうことをオススメします!